「全速前進」

4478732701ザ・ビジョン 進むべき道は見えているか
ケン・ブランチャード

ダイヤモンド社 2004/01/08


個人や組織が「全速前進」するために必要な、有意義な目的、明確な価値観、未来のイメージを3つの基本要素としてビジョンを創出し実践していこうというのが本書の趣旨です。
こんなスキルが必要であるとか、管理能力がどうのこうのということはなく、個人の自己啓発というよりは、リーダーとしての心得のような、内容のように感じました。
多くの本が、個人と組織のパフォーマンスをあげることを中心としている、いわば「動的」な内容に対して、ビジョンや、価値判断を中心にすすめる本書はいわば「静的」な、時間をかけてしっかりと反芻するべき内容を、指し示しているように思います。
物語仕立てで進むストーリーは、著者ケン・ブランチャードの「1分間…」と同じ手法で、非常に読みやすいものでした。

要約:
ザ・ビジョン
ISBN4478732701

ビジョンとは何か
ビジョンとは、自分は何者で、何をめざし、何を基準にして進んでいくのかを理解することである

与えられた問いは二つ
誰の為に生きるのか
「誰の為に生きるのか」ということは、「どんな聴衆に向かって、どんな役を演じ、誰を満足させようとするのか」ということです。
自分の実績やまわりの評価によって自分を評価していたら、日々自信が揺らいでしまうでしょう。けれど、よりレベルの高い人々、より高い理想の為に生きようとするなら、状況は違ってくる
正しいと思うことを、他人の意見に流されず、思ったとおり実行できるようになる
つまり一貫性をもってことにあたれるようになる。
自分は何者か-アイデンティティ
人生の目的はなんなのか、どうしてこの世に生きているのか
全ての人が、自分はどうして生きているのか、いったい何をしようとしているのかを考えることが重要
はっきりした目的が無ければ、あれこれと迷いが生じてどんな方向へ流されていくかわかったものではない
それもこれも、人生の目的が本当にわかっていないため

説得力あるビジョンを生み出すための三つの基本要素
有意義な目的
明確な価値観
未来のイメージ

目的とは何か
目的とは、組織の存在意義である
目的とは、単に事業の内容を述べたものではなく、「なぜ」という問いに答えるものである
目的とは、顧客の視点に立って、その組織の「真の使命」を明らかにしたものである
偉大な組織は深遠で崇高な「目的」、すなわち社員の意欲をかきたて、やる気を起こさせるような、「有意義な目的」をもっている
表面的な言葉づかいより、そこから人々に伝わる「意味」 のほうが重要である

目的のたとえ話
三人の労働者がビルの建設現場で働いていると、通行人が近づいてきました。最初の労働者は汚れて汗まみれで、仏頂面をしていました。通行人が「あなたは何をしているのですか」と尋ねると、労働者は「レンガを積んでいるでさあ」と答えました。二番目の労働者も汗まみれで、同じように仏頂面をしていました。通行人が「何をしているのですか」と尋ねると、二番目の労働者は、「自給2ドルで働いているんでさあ」と答えました。三番目の労働者も、やはり汚れて汗まみれでしたが、希望に燃えたいきいきした表情をしていました。一生懸命働いている点は他の二人と同じなのに、この人は仕事を楽々と片づけているように見えました。通行人は三番目の労働者に「何をしているのですか」と尋ねました。すると彼は、「大聖堂を立てているんでさあ」と答えました。

『目的』 は 『なぜ』を説明するもの、価値観は 『いかに』を説明するもの

価偉観とは何か
価値観とは、目的を達成する過程で、どう行動していくべきかを示す、ゆるやかなガイドラインである
価値観とは、「自分は何を基準にして、どのように生きていくのか」という問いに答えるものである
価値観の内容を具体的に明らかにしないかぎり、どんな行動をとれば価値観を実践できるかはわからない
つねに行動を伴うものでなければ、価値観は単なる願望にしかならない
メンバーひとりひとりの価値観と、組織の価値観とをl致させなければならない

価値観-信念や理想のこと
価値観とは、ある種の特質を好ましいと考える深い信念のことである
自分にとって何が正しく、何が大切かは、その人の『価値観』によって決まる
私たちは、『価値観』を目安にして判断や行動を選択していく

すぐれた企業には、必ず目的を支える価値観がある
もうひとつ、大切な価値観
やるからには『成功する』ということだ
いくら口で約束しても、実行できなければ会社は発展しない

末来のイメージとは何か
未来のイメージとは、最終結果のイメージ
あいまいではなく・はっきりと思い描けるイメージである
なくしたいものではなく、つくりだしたいものに焦点をおく
最終結果に到達するまでのプロセスではなく、最終結果そのものに焦点をおく

ビジョンを現実に移しかえていくためのポイント
ビジョンを創造するプロセス
ビジョンを伝えるプロセス
ビジョンを実践するプロセス

看板を掲げるだけでは、ビジョンにならない。
ほんもののビジョンとは、額に入れて飾っておくものではなく、現実のなかで体験されていくものである

ビジョンを伝達する
ビジョンづくりは現在進行形のプロセスであり、たえずそれについて話し合っていく必要がある

戦略
ビジョンから目をそらさないこと
一身を投げ出す勇気をもっこと
やろうと思えば、できないことはない、やろうと思えば夢はかなうのだということを、人々に気づいてほしい。-テリー・フォックス(1980年)

『成功』から『意味』へ。
心の余裕ができたら、社会にお返しをすることを考えよう。
ビジョンとは、自分さえよければいいのではない。
私たちはみな、この世界でともに生きているのだから

説得力あるビジョンかどうかを確かめるためのチェックリスト
□そのビジョンは、自分たちの使命をはっきりさせてくれるか。
□そのビジョンは、日々の決断を正しく行っていくための指針になりうるか。
□そのビジョンは、めざすべき未来を目に見えるような形で描いているか。
□そのビジョンには永続性があるか。
□そのビジョンには、ライバルに勝つというだけではない、何か崇高なものがあるか。
□そのビジョンは、数字の力を借りずに、人々に活気を吹き込むことができるか。
口そのビジョンは、あらゆる人の心と精神に訴えかけるか。
□そのビジョンは、ひとりひとりに自分の役割を自覚させるか。

仲間がみんな、共通のビジョンの実現をめざしているという信頼感を生み出すこと。そしてお互いを尊重すること。そのためには、自分の役割を自覚し、自分自身に対しても、相手に対しても責任を負う。そして、たとえ意見が食い違っても、自分のエゴのためではなく、あくまでお客様中心に解決していくこと